2016年7月14日木曜日

3Dスキャナーを使ったものづくり その②CADモデリング

前回は、アイデアスケッチからインダストリアルクレイを使って立体造形のクレイモデルを制作し、3Dスキャナを使ってスキャニングするところまでをご紹介しました。
今回は、3Dスキャナでスキャニングしたポリゴンデータから Geomagic Design X を使ってCADモデリングし、3Dプリンターでプリントするところまでについてご紹介します。

●3Dプリントするまでのワークフローについて
1.スキャンデータ(ポリゴン)の読込み
2.パッチネットワーク
3.領域を分割
4.自由曲面の抽出
5.ソリッド形状に変換
6.フィレット
7.ブーリアン
8.ポリゴン化
9.3Dプリント

●使用したソフトウェア
Geomagic Design X
Design X は3Dスキャンデータを元にCADモデルを作成することのできる、世界でただ1つの3Dリバースエンジニアリングソフトウェアです。編集可能なソリッドモデルはさまざまな目的に使用することができます。

●使用した3Dプリンター

・ProJet® MJP 3600 Series
正確で高精細な高い能力を誇るモデルがプリントできます。素材は VisiJet M3 Crystal を使用しました。

1.スキャンデータ(ポリゴンデータ)の読込み
既存製品とデザインしたクレイモデルのスキャンデータをDesign X 内に読み込み
個別にデータを作成する準備をします。
既存製品のスキャンデータ
デザインしたクレイモデルのスキャンデータ

2.パッチネットワーク
読み込んだ既存製品側のポリゴンデータから
Desigin X のサーフェシングタブのパッチネットワークコマンドを使って自由曲面を作成します。
ここで作成されたサーフェースデータは、既存製品に合わせ込むための合わせ面として後で使用します。
パッチネットワークコマンドは形状から輪郭曲線を抽出し、パッチネットワークをメッシュ上に自動的に作成する機能です。サーフェースデータを作成するのに必要になります。
パッチネットワークコマンドが適用されている状態
サーフェースデータに変換された状態

3.領域を分割
デザインしたクレイモデルのスキャンデータを
領域タブの自動分割コマンドを使って領域分割します。
自動分割コマンドは曲率や形状に基づいて幾何形状領域に自動的に分類し、異なる色で表示する機能です。
自動分割コマンドで領域分割したデータ

幾何形状領域に合わせて分割されます

4.自由曲面の抽出
自動分割された幾何形状領域にメッシュフィットコマンドを使いサーフェースボディを抽出します。
メッシュフィットコマンドは領域にフィットするサーフェースを作成する機能です。
サーフェースボディを抽出

5.ソリッド形状に変換
構成する必要な幾何形状領域を抽出したら
サーフェーストリムしてソリッド形状(閉じた状態)にします。
サーフェースのトリムコマンドを使用します。
構成する必要な幾何形状領域を抽出

6.フィレット
 ソリッド形状からエッジの部分にフィレット加工します。
フィレットコマンドを使用して角を丸めます。
フィレット加工した状態

7.ブーリアン
空洞になる側を引いて合成します。
トリムコマンドなどを使用して合成していきます。
合成された状態
裏面(パッチネットワークで作成したサーフェースデータを使用)

8.ポリゴン化
メッシュに変換コマンドを使いサーフェースデータをポリゴンに変換します。
ポリゴンデータに変換することによって、3Dプリンターで出力することができます。
ポリゴン化された状態


9.プリント
ポリゴン化したデータを3Dプリンターで出力し完成となります。
光造形でプリントした完成品


最後に
アイデアスケッチ→クレイモデリング→3D CAD化→3D プリント→試作
アイデアスケッチから試作までのフローにおいて、以前は、形状を測定するためレイアウトマシンが必要だったり、CADデータに変換した後は現物化するのにNC加工機を使ったりと膨大な設備・時間と労力を必要としました。
そして、大規模な設備と投資を投入しても再現性は低いのが現状でした。

しかし今回の3Dスキャナー・リバースソフトウェア・3Dプリンタを活用することで、データを持ち合わせない既製品を3Dスキャナーを活用することでデータ化することができ、リバースソフトウェアでは高い再現性を実現しつつ設計変更が必要なとなったときにソフトウェア内で完結させるとができました。
3Dプリンタでは短い時間で高品質な試作品をアウトプットすることができました。これにより、少ない設備と労力で素早く高品質で再現性の高い試作品が実現できました。

昨今の事情として消費者ニーズの変化が加速する中、開発スピードも加速していく必要があります。

これからは開発時間を減らすことなく開発スピードを加速して再現性の高い試作品をアウトプットすることができます。