2018年7月27日金曜日

STL(ポリゴン/メッシュ)データを軽くする方法

測定データの容量が大きく3Dプリンターへ読み込めない!
測定データを間引いて形状を変えずにデータ容量を小さくする方法についてお伝えします。



3Dスキャナで測定したデータは点群(点の集合体)になっており、取得した点群データの容量が大きいほど形状の再現性も高くなります。昨今の測定機は一度のスキャニングから取得できる点群数が増えており、気付かないうちに大容量の点群を測定していた!ということも起きています。



ついつい、点群の数が多いほど形状の再現度も高いため"よいデータ"であると思われがちですが、データが重いことによる弊害もあります。

・3Dプリンターへデータが読み込めない
・形状を変更するときなどの計算処理にすごく時間がかかる
・ファイルの管理がたいへん

じつは3Dスキャナーで測定したデータには、必要性の低い点群があります。その不必要な点群を削減し必要とされる点群データを残すことで、データサイズを減らすことができます。これにより、3つの問題を同時に解決することができます。

そのやり方について今回はご説明します。
使用したソフトウエアはGeomagic Design Xになります。
Geomagic Wrapにも今回使用した機能と同様のコマンドがあります。



3Dスキャナーで測定するときに同じ場所を複数回往復すると、同じ測定データが重なることで点群の数も多くなり不必要なデータが蓄積されます。そのため必要な点群を確保し、必要のない点群を間引くという作業が工程として必要となります。



しかし、測定データを間引く際の注意点として、減らしすぎると曲率部の形状がショートカットされるようになります。形状が鋭角であるほど頂点部分の点群が減らされることにより、形状が丸くなることで、現物と離れ再現性が失われます。



Geomagic Design Xには、曲率部の測定データを残しつつ全体を間引く『曲率考慮』という機能があります。この機能を使うことにより、形状の再現性を失うことなくデータを軽くし作業性を上げることが可能となります。



容量が大きすぎて読み込めなかったソフトウエアや3Dプリンターへの入出力が可能となります。



2018年7月5日木曜日

測定物からCADデータを作成する基礎知識

測定機でスキャニングしたデータをモデリングし、CADデータを作成するまでの過程についてご質問いただきましたので、まとめたものを記事にしました。

スキャニングからモデリングについては、専門的な分野のため個々の情報については書籍や情報があるものの、全体を通した工程となると情報を見つけることが難しいとのことでしたので、今回の記事を参考にしていただければと思います。



今回のモデリングについては、Geomagic Design X リバースエンジニアリングソフトがベースになっています。
測定機については、非接触の測定機で点群で測定されたものという条件になります。
測定機もいろいろな種類がありますので、機種や設定によっては点群ではなくポリゴン・メッシュに変換されたものが、最初の状態になるものもあります。



いろいろ種類の測定機がありますが、今回は非接触の測定機(アームタイプ)で測定します。
測定物にレーザーを照射して、測定ボタンをクリックすると3Dデータとしてソフトウエアに点群データが読み込まれます。
※Geomagic Design Xはソフトウエア内から対応する測定機に対し、直接制御(スキャニング・プロービング)を行うことが可能です。



測定データからリバースモデリングするまでの流れは、大まかに分類すると『点群→ポリゴン/メッシュ→サーフェース/ソリッド』の3つです。



しかし、この3つの工程に対しリバースする形状とゴールとする形状によって選択する項目が変わります。リバースするものが自由形状なのか機械形状なのか、ゴールとする形状として3Dプリンタで出力・量産用金型・表面データ作図などがあります。



細やかに手順を項目分けすると以下になります。
有機形状の自由形状の場合は6項目でCADデータに変換することが可能ですが、平面・円柱・円筒なので構成された機械形状を作成し、長さなどの寸法を決めたい場合は、8項目までの工程があります。

項目ごとの内容について以下でまとめました。
  1. スキャニング
    測定機で測定(スキャニング)します。
  2. 不要部の除去
    常盤や治具など測定物に関係ないものを測定した場合や、細やかなノイズを削除します。
  3. 位置合わせ
    一度の測定で測定できなかった場合(測定物の裏側など)足りない場所を方向を変えて測定する必要があります。複数の測定データがある場合に同じ位置へ位置合わせを行います。
  4. 合成/統合
    複数の測定データがある場合は1つのデータに合成/統合します。
  5. 点群の間引き
    測定したままの点群は必要以上に測定されている場合が多く、その分のデータ容量が大きいと作業効率の低下にもつながるので、必要となる点群の数まで減らします。この時に曲率の小さな場所は減らさずに平らな場所を多く減らしていきます。
  6. ポリゴン/メッシュ化
    点群から三角形で構成されたポリゴン/メッシュに変換します。
    この時に一つの塊として穴がない状態にすると、3Dプリンタに出力できるデータになります。フィット性の高いCADデータを作成する場合は、ポリゴン/メッシュの状態から変換することが可能です。
  7. 領域分割
    ポリゴン/メッシュは三角形の集合体ですが、曲率を読み取って形状の領域分けをします。このことによりCADデータのような扱いができるので、領域にフィットするサーフェスの作成などが楽になります。
  8. 2Dスケッチ
    機械形状のモデルを作成する場合、測定データを参考値として寸法を決めながらモデリングすることができます。そのためには2D平面でスケッチを作図し、スケッチをベースに押し出すなどしてCADデータを作成します。
  9. CADモデリング
    個々にモデリングした形状の体積を足し引きしながら一つのモデルを作成します。
以上の工程で測定データが座標系に整列していない場合は別途、『8.2Dスケッチ』の前で座標系に整列する必要があります。

Geomagic Design Xでは、対応する測定機から『メッシュビルドアップウィザード』という機能を使って、2番から6番までを1つのコマンドで実行することが可能です。コマンドの切り替えによる手間が省け、効率的に作業することができます。