JISによる3DAモデル(3D Annotated Model: 三次元製品情報付加モデル)の規格化、DTPD(Digital Technical Product Documentation:3次元図面)の普及、3Dスキャナやプローブ(3次元測定器)での製品のデジタル化が普及したことで、GD&T(Geometric Dimensioning and Tolerancing:寸法幾何公差)による品質管理も広まっています。そこで今回は、GD&T とはどういうものか、何の役に立つのかをご紹介します。
では早速、例えば、2本の円柱を並べて繋げるための部品を作るとしましょう。
作りたい部品 |
繋げる部品の穴は大きすぎても小さすぎてもだめで、ぴったりはまる必要があるとします。そこで仕上がった部品がちゃんとはまるかどうか、仕上がった部品の内径をノギスで測ったところ、結果は期待通りの値(たとえば 20)だったとしましょう。
念の為、数か所測ってみても、結果はいずれも 20(および誤差範囲)であったとき、「よし、よし、よくできた」と思えそうなのですが、ちょっと待ってください。こんな場合もあり得るのです。
3つの寸法は 20 だが、形は円とは言えない |
これは極端な例なので目視でも判断できますが、実際は一部やわずかな歪みとなると見た目にもわからず、寸法だけでは目的に即した結果になっているかどうか判断できない場合があるのです。そこでサイズだけではなく、その形も評価したい場合に活躍するのが GD&T です。
例えばこの例の場合、「円筒度」を使って評価したい部分が「円筒であるかどうか」(許容できる範囲での円筒としての形状であるかどうか)ということを調べることができます。
評価は、「調べたい部分が同じ軸の径の違う2つの円筒の側面の間に収まるかどうか」で判断します。言葉にするとちょっとわかりにくいので図で見てみましょう。
次の図は調べたい部分だけ(穴の内側部分)を抜き出して水色の点で表示しています。2つの緑色の破線の円筒が2つありますが、これが 同じ軸の径の違う2つの円筒 です。
つまり、この2つの円筒の側面と側面の間に水色の点が収まっているかどうかを調べることで、収まっていれば OK、収まっていなければ NG という判断になります。
グレーの円筒輪郭は、本来こうあるべきである形を示す参照用の円筒 |
見やすいように一部断面を真上から見てみると、こんな感じです:
一部を断面として真上から見た場合 |
水色の線が評価したい部分です。緑の破線の2つの円筒(上から見ているので円に見えます)には隙間があります。この隙間の中に評価する水色の線がすべて収まっていれば、評価結果は「OK : 可」となります。
2つの円筒の隙間は公差域と呼び、許容できる量として測定者が指示します。この例では、2つの円筒の幅内に収まっていませんので、評価結果は「NG : 不可」となります。
※ここでは説明の便宜上断面のように見せていますが、円筒度は三次元で評価しています。断面として二次元で評価するには真円度などほかの評価方法があります。
こうして形として評価することで、実際にこの部品が目的(円筒2つを隙間なくはめる)に適した基準にあるかどうかを判断することができるのです。
GD&T には、このような形(フォーム)を評価するものの他にも、正しい位置にあるかどうかの位置を評価するものや、あるものに対して直角であるかどうかというような姿勢を評価するなど、目的に合わせた様々な評価種類があります。これによって他の部品とのアセンブリなど、部品の目的に支障の出ない品質の提供に役立つわけです。
いかがでしたか?今回はざっくりと円筒度に限定して説明しましたが、現在WEB や市販書籍などでも多く情報が提供されていますので、興味のある方は他の種類も見てみると意外と楽しく直観的な評価方法であることが発見できるかもしれません。
関連リンク
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